麻倉怜士が喝! 「お持ち帰りCD」の成功が導く音楽産業の新たな道

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最近驚いたのは、「お持ち帰りCD」という新たなCDパッケージの取り組みです。

 2012年1月に東京の3会場で奥田民生さんがライブイベントを開催しました。NHKホール 2公演、府中の森芸術劇場で1公演、渋谷公会堂で1公演の計4公演です。ここで「お持ち帰りCD」という、ライブ演奏がそのまま入っているCDを発売したら瞬時に完売したというのです。


奥田民生さんのライブツアーを収録したお持ち帰りCD『tamio okuda / Gray Ray & The Chain Gang Tour - Live in Tokyo 2012』のジャケット
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 府中の森芸術劇場で500セット、NHKホールは750セットが2公演分、渋谷公会堂で600セットです。関係者に聞いたところ、最初は「そんなもの売れませんよ」という話だったのが、7日の府中の森芸術劇場からはじまって11日、12日(どちらもNHKホール)、31日(渋谷公会堂)と評判が上がってきたそうです。

 2回目の公演からは午後3時に売り出して、そこで4000円払って引換券をもらうというスタイルだったのですが、750セットしかないので売り出し前に列ができて即座に完売しました。

 そのやり方はこうです。ライブは第1部と第2部があり、その後にアンコールがあります。第1部の演奏を録音しておいて、それを第2部の演奏時に編集・マスタリングしてデュプリケート(複製)します。第2部の内容はアンコールを長めに演奏してもらっている間にマスタリングしますが、それでも間に合わないので30分ほど待ってもらいます。できあがったら引換券とCDとを交換するというものです。

 価格は2枚組で4000円です。1人1枚という限定で販売したのですが、先日オークションで5万円前後まで行ったそうです。その値段でも買う人がいるということです。

(中略)

 「お持ち帰りCD」の画期的なのは、まさにライブ会場のその場で買えるということです。自分が直前まで楽しんだライブの演奏が全く損なわれることなく、化粧されることもなくまったくそのまま聞ける。CDはいわば「缶詰」のような感じで音楽を閉じ込めますが、それは生ではなく缶詰の味に変わってしまっています。その例えで言うと、お持ち帰りCDは生の刺身を真空パックにしたようなもので、開けるとそのままの鮮度で出てきます。

 素晴らしいのは、30年前からあるCDというパッケージメディアが新しい魅力を持ったということです

 従来は音楽産業の中にパッケージビジネスがあり、違うカテゴリーとしてライブコンサートビジネスがありました。今はCDは元気がないのですが、その一方でライブは勢いがあります。実際にポップス、演歌、クラシックと実に多数開催されていて多くのファンを動員しており、リピーターも多くいます。

 そのライブの感動をすぐにパッケージ化できるのであれば、ニーズは大いにあると思います。ライブに足を運ぶぐらいですからアーティストやその世界観が好きなわけで、ライブならではのパッケージが得られるのであればそれこそが一番貴重なものでしょう。ライブ演奏はそこにしかない演奏なので、まさにワンアンドオンリーのコンテンツです。