非正規で満足? 20代の本音

 6月下旬。若者の求職状況を知ろうとJR渋谷駅から徒歩10分程度の距離にあるハローワーク渋谷(東京・渋谷)から出てくる人に声をかけた。2〜3分なら、と立ち止まってくれた篠田美保(21、仮名)に「どんな正社員の仕事を探してきたんですか」と聞くと意外な答えが返ってきた。「正社員はみてないです。派遣や契約社員の求人をみてきました」

 「何で派遣などの仕事を探しているんですか」。そう尋ねると「友人が給料が高いって言っていたし、正社員といってもどの業界のどの職種を選べばいいかわからない」と篠田は早口で答え渋谷駅方面に歩いていった。
 「生活には全く困らないんで」。コンビニ店員などアルバイトを3件掛け持ちし、月25万円稼ぐ平田祐摩(26)が東京都世田谷区の居酒屋で淡々と話す。
 新卒時には、映画関連の正社員を目指し10社程度の採用試験を受けたがすべて落ちた。その後は正社員としての仕事も探しているが、アルバイトを続けるのも悪くないと考えている。「正社員として働く友人より収入は多い。自分がやりたいと思わない仕事をして、将来もらえるか分からない企業年金のためにたくさん払うより今使えるお金が多い方がいい」
 労働政策研究・研修機構(東京・練馬)の研究所長、浅尾裕の推計によると20〜29歳の派遣社員の賃金は同年代の正社員に比べ12〜17%高い。契約社員も1%弱多い。年齢が上がるごとに給与が上がる年功賃金は、一人前になる前の若年のころは割安な給料で働くことが多いためだ。
 浅尾は20代の非正規労働者の賃金水準が正社員に比べ大きく変わらないことが、若者がフリーターを選ぶ一因と主張する。「明確にやりたいことがなく賃金面でも困らないなら正社員を目指すのをやめ、とりあえずフリーターになろうと考える若者は少なくない」という。アルバイトやパートでも掛け持ちすれば正社員と大きくは変わらないという。
 「30歳になっても正社員でなければ仕事を選んでいられない」。コールセンターで契約社員として働く飯久保友哉(25)はカフェでコーヒーを片手に話す。海外経験から、貿易関連の正社員を目指す。一人暮らしでも「生活には十分なほど給与をもらっている」という。経験などを求められ希望の職種に就くのは難しいと焦りも見せるが、今の生活にも不満は少ないという。
 内閣府の「国民生活に関する世論調査」によると、20〜29歳の現在の生活への満足度は2011年時点で「満足」「まあまあ満足」と回答した割合は計73%と30〜39歳(69%)や40〜49歳(59%)などと比べて多い。年齢別では20〜29歳が最高だ。
 非正規で働く若者が増える中、生活への満足度はむしろ上昇している。フリーターでも正社員でも大きく変わらない賃金構造が一因のように思えた。=敬称略
(商品部 中村亮
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGU1400K_U2A710C1000000/