「自然エネルギーか原発か」という議論の不毛

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110724

その1:「電力不足」は「エネルギー不足」を意味しない。

エネルギー源とは、石油、石炭、天然ガス、太陽光線、水力、風力、原子力などの一次エネルギーを指す。電気はそれらから作られる二次エネルギーであって、エネルギーの利用形態のひとつに過ぎない。

一次エネルギー源のうち9割近くが化石燃料であり、その化石燃料は今後 2〜300年は無くならない。永久にもつわけではないが、原発があろうがなかろうが、節電しようがしまいが、100年以内に「エネルギー不足」になったりはしない。

「電力不足=エネルギー不足」のように言うのは、明らかな間違い。エネルギーは不足していないので、化石燃料を使えば電力も不足しない。



その2:電力不足を解消するために、化石燃料自然エネルギーか、それとも原発再稼働かという議論は、環境(CO2)問題にとって中心的課題ではない。

日本のエネルギー消費のうち、電力の占める割合は約25%。これは国際的には高い水準で、ドイツでは電力はエネルギー全体の19%。日独だけでなく大半の国において、エネルギー消費の7割から8割は、化石燃料が直接的に使われている部分である。

全体の25%である電力の、またその3割(=原発が担ってきた部分)について(=つまり全体の1割弱について)、原発再稼働か、自然エネルギーか、いや化石燃料か、という議論をすることに、エネルギー政策の観点からは大きな意味はない。(思想的に意味があるというなら話は別)

原発を止め、その分、化石燃料の使用を増やすと、CO2が増えるからよくない。だから自然エネルギーだ」という人がいるが、CO2を減らしたいなら、電力以外の部分(=直接、化石燃料を使っている8割の部分)について対策をする方がよほど重要。繰り返すが、原発が担ってきたのは、エネルギー消費全体の1割弱にすぎない。



その3:家庭の節電は、エネルギー消費全体の抑制には意味がない。

全エネルギー消費の半分はモノを作るために使われており、その輸送に使われている分を加えると全エネルギーの3分の2に達する。

家庭の家電製品のスイッチを一切入れなくても、一戸建てやマンションに住み、風呂やトイレがあって、冷蔵庫もあって、そこに食品が入っていて、机の上にはパソコンがあり、服を着ていて、歯磨きをして、朝になったら車や電車で通勤し、オフィスはビルの中にあり、火事になれば消防車がくる、という生活が存在する段階で、既に全エネルギーの7割近くが必要とされている。

大半のエネルギーは、現代生活そのものを維持するために使われている。家庭での直接的なエネルギー消費は、全エネルギー消費の1割程度にすぎず、さらに電気はその中の27%である。つまり、エネルギー全体からみれば3%ほどであり、その中での節電なんていうのは、消費エネルギー全体の節約という視点からみればインパクトが極めて小さい。