なぜ、男の子を甘やかせてはいけないのか?

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【第1回】
なぜ、男の子を甘やかせてはいけないのか?

久保田カヨ子(くぼた・かよこ)
子どもを育てるということの大変さは、いまも昔も変わりません。
ただ、大きく変わったものがあります。それは道具と環境です。

まず道具。子どもが使うコップの材質で考えてみます。
昔は、大人が使っているものと同じ陶器製やガラス製でした。
子どもの手にちょうどよい大きさの細くて深い陶器製の湯呑みや、ガラス製のコップは、高価なモノも安価なモノも、ちゃぶ台よりはるかに高くなったテーブルから落とすと割れてしまいました。
すべての母親が、「静かに、そーっと置くのよ」とその使い方を教えていたのは、何十年も昔のことになってしまったのです。
やがて、落としても割れないプラスチック製コップが出てきて、子どもの陶器製コップやガラス製コップの扱いは、みるみる下手になっていきました。
でも、よく考えてみてください。
落として割れるのが危ないというのであれば、落とさない使い方をきちっと教えればいいのです。

オムツもそうです。昔は紙オムツなんてありませんでしたから、母親は大変な苦労をしたものです。
たとえば、外出先でのオムツ替え。いまは紙オムツなので、くるくるっと丸めて持ち帰るか、トイレのごみ箱にポイっと捨てておしまい。しかも、吸収力に優れた素材を使っていますから、赤ちゃんのおしっこやうんちがオムツの外に出てしまうということも、ほとんどありません。

でも、布オムツを使っていた昔は、そうはいきません。
紙オムツのように手軽に片づけられないため、オムツ替えの大変さから逃れたい母親は、オムツが少しでも早く取れるように、トイレトレーニングを早くから一所懸命に行いました。

陶器製やガラス製コップの扱いも、トイレトレーニングも、親が子に“やらなくてはならないこと”として教えるとき、子は真剣に協力してくれたものです。ここには、親と子の大事なコミュニケーションが成り立っていました。
でも、最近は紙オムツですから、「おしっこは大丈夫?」と声をかけるお母さんが、とても少なくなってきたことを実感します。
このようなところから、親と子のコミュニケーション不全が始まるのです。
子どもを育てていく過程では、どんな小さなことでも、頻繁にコミュニケーションを取り合うことが大切なのです。

冒頭の陶器製やガラス製コップの使い方も、コップを落とさずに使う方法を教えることが、子どもとのコミュニケーションにつながるのです。
このように、子育ての道具立てが変わってきたことによって、子育てに対してずぼらな親が増えてきました。

また、環境の変化も、子育てに対して無視できない影響を及ぼしています。
昔は4、5人生んで育てるのがあたりまえ。でも、いまは少子化の時代ですから、1〜2人が普通になってきています。
手をかける子どもの数が少なくなると、どうしても過干渉になりがちです。そのうえ、甘やかせた育て方をしてしまいます。

本当に必要なコミュニケーションを取らずに、過干渉となって甘やかしてしまう。これでは、まともな大人になどなれるはずがありません。

それでも、まだ女の子であれば、母親もわかり合える部分がありますが、これが男の子になると、育て方がどうもよくわからない。
実際、ここ数年で、男の子の育て方に悩むお母さんからの相談が急増しています。
育て方がわからないから、つい甘やかせてしまう。
たとえば、断乳をするべき時期というものがあるのですが、それができない母親のなんと多いことか!
基本的に、男の子はお母さんが大好きです。
これは、「性」の違いからくるものが大きいのですが、お母さんとしては、自分のおっぱいにしがみついてくるわが子が、かわいくて仕方がない。
特に男の子は、女の子に比べて、強い乳房願望がありますから、いつまでもおっぱいを吸い続けようとします。

そのうえ、最近は夫婦共働き家庭が増えていますから、フルタイムで働いているお母さんもめずらしくありません。
昼間、仕事でなかなか子どもの相手をすることができないという申し訳ない気持ちから、必要以上に甘やかせてしまいます。
断乳も、男の子のほうがやめにくいのです。たとえおっぱいの出が悪くても、しがみつき吸いついてくると、なかなかそれをやめさせることができない。
結局、子どもが乳離れできないのではなく、母親のほうが断乳できないのです。その理由は、「子どもがかわいそうだから」。

もっと言うと、男の子の断乳時期が遅れるのに、父親の気持ちが反映する例もあります。自分が早いうちに断乳を強いられて寂しい思いをした。だから、自分の子どもにはそのような思いをさせたくない。そういった理由で、自分の妻に「まだ断乳させなくても、いいんじゃないか」とお願いしたりするというのです。

これでは、いつまで経っても男の子の断乳時期が遅れてしまいます。
そして、ますます甘えた男の子が増えていきます。
これは、正直言って日本の危機ではないでしょうか。
私は時々、「男の取り柄はなにか」ということを真剣に考えてみるのですが、その答えの一つは、おそらく「新しいものをつくり出す」ことだと思います。
でも、親の甘やかし方がひどくなると、新しいものをつくり出す能力さえも、奪ってしまう恐れがあります。

たとえば、さまざまな色のブロックを使って、自由になにかをつくらせるとしましょう。
子どもは勝手に、自分の感性でなにかを組み立てようとします。
でも、これは往々にして男の子を持つお母さんに多いのですが、子どもが一所懸命になにかをつくろうとしているのに、そこで黙って見ていられない親が結構いるのです。

「○○ちゃん、ここはこの色を使ったほうがいいわよ」
「ここは、こうしたほうが、カッコいいよね」

お母さんとしては、子どもの理解力を早めようとして、手助けをしているつもりなのでしょうが、これが本当によくないのです。

想像力のある子は、自分のイメージでいろいろなものをつくり上げます。
親は、それを黙って見ていればいいのです。
自分の力でなにかを生み出そうとしているときに、お母さんが口や手を出してしまうと、子どもの想像力や興味、ヤル気は、その時点でしぼんでしまいます。親の言いなりになってしまうことは、「創造力の欠如」につながります。

新しいものをつくり出すのが取り柄の男の子が、お母さんの過干渉と甘やかしで、その取り柄すら奪われようとしている。これでは大人になって、なんの取り柄もない男ばかりが、世の中にあふれかえってしまいます。

私が見ている育児教室でも、お母さんがいなければ、いろいろ優秀にできる子どもなのに、お母さんの姿が目に入った途端、なにもしなくなる子どもがいます。

それもやはり男の子に多いケースですが、やはりお母さんに対する甘えが非常に強いからです。
最近、とても頭がいいのに、なかなか実社会に出ていけないひきこもりの子どもが増えていますが、まさにそれを想起させます。
実は、子どもがしかるべき年齢に達したところで、きちっと独立できるようにするためには、3歳までに最初の親離れができるかどうかにかかっているのです。
そのためには、とにかく子どもを甘やかせないこと。断乳も、その時期がきたらきちっと行うこと。
そして、子どもがやることに対して、いちいち口や手を出さないこと。
時には、「お母さんもやりたいから、教えて」と仲間に入れてもらうのもいいでしょう。
特に、男の子を持つお母さんは、これらの点に留意することが大切です。

 以降の連載は下記のとおりです。お楽しみに!